Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第36章 第36章 僕達の引越し協奏曲
悶々としながらも車は目的地に着き、見上げた建物は、いかにもな白い建物。
「え、なんで?」
首を傾げる僕をよそに、翔くんはエンジンを停止し、さっさと車から降りてしまった。
「ねぇ、どういうこと?」
問いかける僕に、やっぱり庄内くんは答えてはくれなくて…
「行くぞ」
僕は何度も首を傾げながら、翔くんに手を引かれるまま、後を着いて行った。
広い建物の中を、キョロキョロとしながら歩いていると、翔くんがふとその足を止めた。
「ここだ…」
そこは、〝城島茂〟と名前の書かれたプレートがかかったドアの前で…
「え、え、どういうこと?」
自然と大きくなってしまう僕の声を、翔くんの人差し指が制した。
「話せば長くなるんだけど、実は…つか、とりあえず中入ろうぜ? 先輩も待ってるからさ…」
「う、うん…」
僕は理由も分からないまま、ただただ大きくなる不安だけを抱え、翔くんが開いたドアの向こう側へと足を踏み入れた。
瞬間、僕の耳に飛び込んで来たのは、規則正しく鳴る電子音と、そしてそれまでよりも若干強めの病院特有の匂いで…
窓から吹き込む風に揺れるカーテンを開けると、僕の記憶にあるままの姿で、城島さんがそこに横たわっていた。