Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第36章 第36章 僕達の引越し協奏曲
翔くんは昔っからそうだ。
僕を心配し過ぎて、ちょっと過保護になり過ぎてるっていうかさ…
それだけ僕のことを大事にしてくれてる、ってことなんだろうけど、僕だってもう大人なんだし、そこまで心配しなくても…って思っちゃうのは、贅沢なのかな?
ぼんやりと考えながら、翔くんに手をひかれるまま玄関ドアの前に立った僕。
なんだか、ちょっとだけ緊張しちゃう。
「これ、智の鍵な」
「うん…」
受け取った鍵には、僕の好きな魚のモチーフが付いていて、小さな鈴まで付いている。
「鍵、開けて?」
「え、僕が?」
聞き返した僕に、翔くんが満面の笑みで頷くから、僕はドキドキしながらも、受け取ったばかりの鍵を、そっと鍵穴に差した。
ゆっくり鍵を回すと、中でロックの外れる音がして…
「開いた…の? ねぇ、鍵、開いた?」
別にどうってことないことなんだけど、何故か興奮してしまう。
「早くドア開けろよ」
「う、うん…」
やっぱりトキドキしなごらトアノブを握り、マンションのとは違う、僅かな重たさを感じるドアを開けた。
「うわ…ぁ…」
きっとどこにでもある風景…
なんなら、実家とそう大して変わりない風景なんだろうけど、不思議と声が出てしまう。