Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第36章 第36章 僕達の引越し協奏曲
翔くんに上手いこと言い包められ、全然納得は出来てないけど、渋々玄関を出た僕は、鍵を締める直前に、住み慣れた部屋に向かってペコリと頭を下げた。
「お世話になりました」って。
そして、僕達は手を繋いでエレベーターでエントランスまで降りると、管理人さんと挨拶を交わし、引っ越しトラックの後ろて待つ翔くんの車に乗り込んだ。
「よし、行こっか」
「うん…」
それっきり僕達なの会話はなく…
…っていうか、〝会話なんてする時間もなく〟の方が、もしかしなくても全然正しくて…
「着いたぞ」
言われて、翔くんの顔を見た僕は、ありえないくらい間抜けな顔をしてたと思う。
だってさ、だってさ…
「へ、ここ…なの…?」
「そうだけど?」
そうだけどって…、えぇっ?
「マジで言ってる?」
「当たり前だろ? このタイミングで嘘つくと思う?」
いやいや、そうは思わないけどさ、でもここって…
「めっちゃ近いんだけと…」
前のマンションから歩いて約10分…?
雅紀パパのお店からも5分…?
なんなら僕と翔くんの実家からだって、15分もかかんないんですけど?
「うん。色々と考えてさ…。つか、俺が心配なんだよね…」
言いながら、翔くんが僕の手をキュッと握った。