Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第35章 僕達の青いチューリップ
「さ〜とし?」
僕が拗ねたのが分かったのか、翔くんが気持ち悪いくらいの猫なで声で僕に擦り寄って来る。
ってゆーかさぁ、今更そんな声出したって無駄だっつーの!
僕怒ってるんだから。
でも…
「智くん? さーとし?」
何度も名前を呼ばれてるうちに、僕の怒りは徐々に鎮まって行って…
「さとくん」って呼ばれた瞬間、完全に鎮火した。
だって、そんな風に呼ばれたのって、それこそ小学校の頃以来だし、それに「さとくん」って呼ぶってことはさ…
「もしかして…、覚えてた…の…?」
ってそうゆーことじゃん?
そう思ったら、さっきまで一人で拗ねてたことが急に恥ずかしくなっちゃって…
「えと…、んと…、あの…ね…?」
「うん、何?」
しどろもどろになる僕を、僕が大好きな翔くんのどんぐりみたいな目が覗き込む。
「僕ね…」
「うん…」
「もう一回言って欲しいの…」
「何を?」
「だからね、チューリップくれた時、翔くん何か言ってたでしょ? あの時の言葉を、もう一回聞きたいなぁ〜って…」
「それは良いけど…、まさかお前…」
一瞬、翔くんのどんぐりみたいな目が、僕の嫌いな意地悪な目に変わる。
でも、ヤバい…と思った時にはもう遅くて…
いきなり視界が反転したかと思うと、僕のお腹の上には翔くんが跨っていた。