Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第1章 僕達のちょっとした悩み
「ところで、和は? まだ仕事終わんないの?」
いつもならとっくに仕事を終えて、パパさんの店の後片付けを手伝ってる時間なのに…
「ああ、なんかさ、新しいゲームの開発メンバーに選ばれたらしくてさ、帰り遅いんだよね。…っつかさ、お前暇だったらパパさんの手伝いして来いよ」
なんで僕が…、と言いたいところだけど、そう大して暖房も効かせてない店内で、額に汗をビッショリかいて作業をするパパさんをほっとけなくて、
「仕方ないよな、パパさんにはいつも世話んなってるしな」
脚の長い椅子からヒョイと飛び降りると、僕は照明を落としたパパさんの店に入って行った。
「パ〜パさん、手伝うよ」
パパさんの手から雑巾代わりのタオルを奪い取ると、僕は泡々のクリーナーを使って、ショーケースを拭き始めた。
「助かるよ、サトくん。あっ、でもごめんな? バイト代は払えないからね?」
年の割には若く見えるパパさんが、僕に向かって両手を合わせて見せる。
「え〜っ、そりゃないよぉ…。って、嘘♪ パパさんからはお金貰いませ〜ん。その代わり、和から貰うから♪」
和はその業界じゃ、中々のやり手だって言われていて、所謂“有望株“ってやつ?らしく、バイトで生計を立てている僕とは、収入面では雲泥の差だ。
金を取るなら、パパさんじゃなくて、和からに決まってる。