Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第29章 大人な俺達のバレンタイン小夜曲
丸いガトーショコラを六等分に切り分け、二切れずつ箱に詰めた。
昌宏さんに渡す分と、後は和と愉快な仲間達の分だ。
どうせ明日になれば取りに来るだろうからね(笑)
「さてと…、そろそろ帰るかな…」
って言っても、帰る先は俺のアパートじゃない。
昌宏さんのマンションだ。
多分もう帰って来る頃だろうからさ。
ガトーショコラを詰めた箱に、何の飾りもないのは寂しいと思って、緑色のリボンで出来たシールを貼った。
「これで少しは“らしく”見えるかな…」
流石に今日ばかりは、店の残り物だと思われたくない。
火の元の確認をして、店の照明を全て落とした俺は、戸締りの確認を済ませてから、店のシャッターを下ろした。
愛用のパパチャリ(世間一般ではママチャリと呼ぶ)のカゴに荷物と、昌宏さんのために焼いたガトーショコラを載せ、ペダルを踏んだ。
正直、この時期の自転車は辛い。
風を切る度に、冷たい空気が顔に当たるし、一度風が吹けばペダルだって重くなる。
更に言うなら、俺のアパートまでなら、かっ飛ばせば五分とかからずに着くのに、松岡さんのマンションは、その約三倍。
もう少し厚着してくれば良かった…
後悔したって仕方ない。
それに俺の場合、けっこうな汗っかきだから、あんまり厚着してしまうと、どれだけ寒かろうが、目的地に着いた頃には汗だくになってしまう。
でも手袋くらいはしてくれば良かったかな…