Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第27章 俺達のバレンタイン狂騒曲
「おかえり」
「ただいま」
ごく在り来りな言葉を交わし、キスをする。
軽く触れた潤の唇からは、ほんのりコーヒーの匂いがする。
「腹減った」
シャツのボタンを一つ外し、潤が席に着く。
「忙しかったの?」
「まあね。世間はバレンタイン一色だし…」
だよね…
パティスリーから流れ込んだお客さんで、きっとカフェも大賑わいだった筈。
「お疲れさま。ご飯出来てるから食べよ?」
「おっ、オムライスじゃん。しかもハート付き?」
「う、うん…、バレンタイン…だからさ…。嫌…だった?」
「全然? 寧ろ嬉しいよ」
良かった…。
こんな簡単なことでも喜んでくれるんだ?
だとしたら、例のチョコを渡したら、もっと?
俺は期待に胸を膨らませ、スプーンを手に取った。
でもさ…
チョコ渡すタイミングとか、色々考えてたせいか、妙に緊張しちゃって…
オムライスの味、全然分かんないよ…
「あ、そう言えばさ、今日バイトの子やお客さんに貰ったんだけど、後で一緒に食わない?」
「えっ…?」
潤が鞄の中から出したのは、ピンクの包装が可愛らしい、いかにもな物で…
俺の手からスプーンが滑り落ちた。
そう…だよね…、客商売だもんね?
貰わないわけないよね?
でも先を越されたかと思うと、ちょっとショックで…
「どうかしたか?」
「う、ううん、なんでもない…」
はあ…、ますますタイミング分かんなくなって来ちゃったよ…