Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第26章 僕・俺達のバレンタイン協奏曲
甘い匂いに満ちたリビングに戻ると、智がチョコを溶かしながら、やっぱり鼻歌を歌っていて…
「智、これ…」
カウンターの上に、粘土で出来た”俺”を置いた。
「どう、簡単だったでしょ?」
「うん…、まあ…」
溶けたチョコを掻き混ぜる手を止め、智がゴムベラの代わりにナイフを手に取る。
何をするつもりなんだろう?
頭に?マークを浮かべつつ見ていると、智が“俺”の型をクッキングシートの上に乗せ、潰れてしまわないように、そっとナイフを入れた。
「ふふ、いい感じ♪」
良かった…、もう一回同じことヤレって言われてもさ、正直もうヤリたくない。
「じゃあさ、和はこの中にチョコ流しといてくれる? 僕も作ってくるから♪」
「わ、分かった…」
俺同様、ソフト粘土とラップを手に、リビングから出て行く智を見送りながら、クッキングシートの上で真っ二つになった“俺”をみおろす。
こうして見ると、けっこうリアルっていうか…、多分ラップの跡なんだろうけど、細かい皺や括れまであって…
「なんか…エロ…」
思わず声に出してしまってから、恥ずかしさが込み上げてくる。
勿論さ、潤が俺の形を知らないわけじゃないけどさ、チョコで出来た“俺自身”を見た時の潤の反応を想像すると…
絶対笑われるに決まってるじゃん…
なんか変に緊張してきちゃったよ…
俺は溜息を一つ落として、智の言いつけ通り、型にチョコを流しこんだ。