Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第1章 僕達のちょっとした悩み
智said
「キスしたい」
翔くんの手が僕のほっぺを包む。
その手がちょっとだけ冷たくて、僕は思わず肩を竦める。
でも期待に膨らむ胸だけは、何だか異常に暖かくて…
だって僕も同じこと考えてたから…翔くんにキスして欲しい、って。
僕はキュッと瞼を閉じる(ホントはちょっとだけ薄目なんだけどね)と、尖らせた唇を突き出した。
でも…降りてくる筈の唇は、どれだけ待っても触れることはなく…
変わりに、翔くんの声を殺したような笑い声が聞こえて…
「えっ、なんで笑うの?」
ここ笑うとこじゃないじゃん。
「いやさ、あんまり智の顔がおかしくてさ…、く、くくく…」
そう言ってまたお腹を抱えて笑った。
不細工って言ったり、可愛いって言ったり、おかしいって言ったりさ…人の顔を何だと思ってんの?
「もぉ、翔くんなんて知らない」
フン、とばかり膨れっ面を逸らすと、翔くんが慌てたように僕の髪を撫でて…
「ごめんごめん、どんな智でも俺は好きだから」
そんな言葉に騙されたりしないんだから…
だって翔くんが僕のこと大好きだ、ってこと… 僕知ってるから。
「じゃあ、ちゃんとキスして?」
「だったらちゃんとこっち向いて? ちゃんと目瞑って?」
僕のほっぺを包んだ手に、僕の顔が上向かされると、ゆっくり視界に影が出来て…
僕の唇に、翔くんのぽったりした唇が重なった。
ああ、やっぱり僕、翔くんのキス好きだな…