Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第1章 僕達のちょっとした悩み
翔くんに手を引かれて、約束のお店の前まで来ると、急に胸がドキドキしてきて…
「ちょ、ちょっと待って…?」
店の暖簾を潜ろうとする翔くんを引き止めた。
「どうした? 顔、不細工になってるぞ?」
「だって緊張してきちゃったんだもん…」
”不細工“なんて言われてさ、普段なら”違うもん”って言えるのに…
緊張しすぎて、それも言えないや…
「あのね、口からスイカが飛び出しそうなの…。だからね、”おまじない”してくれる?」
翔くんが僕だけにしてくれる”特別なおまじない”を…
そしたら、この胸のドキドキも治まるから。
「だめ?」
僕が見上げると、翔くんは少しだけ困った顔をして…でも、僕の手を引っ張ってお店の横の通路に入ると、周りをチラチラ確認しながら、僕をギュッと抱きしめてくれた。
「今はこれで我慢しろ。家に帰ったら、好きなだけ“おまじない”してやるから」
真っ赤な顔をして、翔くんが僕の頭を撫でる。
折角完璧にセットしたのにな…
でも、ちょっとだけ嬉しいかも。
それに、さっきまで煩いくらいにドキドキしてたのも、不思議と治まったみたいだし。
「うん。約束だよ? いっぱい“おまじない”してね?」
酔っ払って“無し”なんて、ヤだからね?
「よし、行くか?」
「うん!」
あ、でも翔くん?
“おまじない”って、後からしても効果あるの?