Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第1章 僕達のちょっとした悩み
スマホのアラームに起こされた俺は、まだ隣で寝息を立てる智を起こさない様に、そっとベッドを抜け出すと、出勤の準備を始めた。
いつもなら、亭主関白の如く”朝飯は?”な~んて言うんだけど、今日は特別。
それにバイトも休みだしね?
「行って来るな? また後で…」
穏やかな寝息を立てる頬にキスをして、俺は部屋を出た。
テーブルの上には、方向音痴の智でも迷子にならないように、事細かな地図と、店の連絡先をメモした紙を置いて…。
なーのーにー、だ…
予定の時間になっても一向に智は店に現れず…
「おいおい櫻井、お前まさか振られたとか?」
なんて冷やかされる始末で…
「ちげーわ」
なんて否定してみたものの、やっぱり不安になって、俺は席を立つと店の外に出て、智に電話をかけた。
「おい、今どこにいる? 皆待ってんだけど…」
『あ、翔くん? あのね、多分近くなんだと思うんだけど…。ここどこだろ?」
予想的中。
智はやっぱり迷子になっていて、しかも俺の書いた地図は家に忘れてくるという…
もうこうなると、怒るというより、呆れるって感じ?
「分かった。迎えに行くから、そこ動くなよ、いいな?」
「はーい」
…ったく、こんな街中で智を放っておいたら、今度は変態どころか、人攫いにでも合いかねない。
俺は人込みを掻き分け、智が待つ場所まで走った。