Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第1章 僕達のちょっとした悩み
大男の脇腹に、サッカー部で鍛えたキックをお見舞いしてやると、
「グウェッ…!」
大男は気味の悪い呻き声を上げて、その場に脇腹を抑えて転がった。
「パパ、潤、今だ!」
ニノの掛け声と同時に、パパさんと潤が大男を取り押さえようと飛び掛かる。
その隙に俺は智を抱き上げて、目を見開いたまま放心する智の頬を軽く叩いた。
すると、大きな目を一度瞬かせて、
「あれ…、翔くん…? なんで…?」
叫び過ぎたせいか、声が掠れてる。
「はあ? お前何言ってんの? つか…無事で良かった…」
全身の力が一気に抜けて行くのを感じる。
「怪我は? 痛いとこないか?」
俺は着ていたパーカーを脱ぎ、智の肩に掛けてやると、小刻みに震える身体をギュッと抱き締めた。
「今警察呼んだから…」
ニノがスマホを手に、智の前にしゃがみ込む。
そして智の髪に絡み付いた葉を、一枚一枚丁寧に落として行った。
「ごめんね、智。俺が余計なこと喋っちゃったせいで、怖い思いさせちゃって…」
和のせいじゃないのに…
元はと言えば俺が智に隠し事なんてしたから智がこんな目に…
「俺こそごめん…」
俺はポロポロと溢れ出した涙を指で掬った。