Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第9章 僕達の危険(?)な夜
潤の少々乱暴な運転に軽く酔いながら着いた先は、山奥の、見るからにお化けの出そうな、古びた和風旅館で…
「ね、ねぇ、本当にここに泊まるの?」
だって今にも崩れそうだし…
それに壁だって薄そうだし…
「あれ? おかしいな…、確かに地図ではここなんだけど…」
潤もなんだか不安そうだ。
そりゃそうだよね、潤てばオラオラっぽく見えて、案外お化けとか弱いもんね?
「ちょっと智聞いてきてくんない?」
「えっ、なんで僕? 予約したの潤でしょ? だったら…」
あっ、もしかして潤…怖いんだな?
「ふふ、仕方ない。着いてって上げるから、一緒に行こ?」
それに僕だってこんな山奥に、例え車の中でも一人にされるのはちょっと…ね。
「すいませーん」
所々ヒビの入ったガラス戸を引き、中を覗く。
うーん、予想を裏切らない暗さだ。
物音一つしないし…
「留守…かな?」
の、割には鍵も開いてるし…
「すいませーん、誰かいませんかぁ?」
もう一度声をかけてみる。
すると限界の奥でギシッと床の軋む音が聞こえて、
「誰だい…?」
真っ暗な柱の影から、砂かけババァ…いや、お婆さんがヌッと顔を出した。
「ヒッ…!」
思わず息を飲んだ潤は、腰を抜かす勢いで僕の背中にしがみついた。
あーあ、情けないなぁ…
って、僕も人のこと言えないけどね?
だっておしっこチビりそうになっちゃったもん。