Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第1章 僕達のちょっとした悩み
翔side
智が帰ってこない。
いつもならとっくにバイトから帰ってきている時間だ。
買い物にでも出たんだろうか…
そう思って暫く待ってはみたが、帰って来る気配はなく、時間だけが無駄に過ぎていく。
電話も何度かけてみても、コールはするものの一向に繋がらないし…
智の身に何かあったんだろうか…
その時、テーブルの上に置きっ放したスマホが小刻みに震え出した。
「智、お前こんな時間まで…」
俺は画面を確認することなく電話を取り、一気に捲くし立てた。
でも…
「えっ…、智まだ帰ってないの?」
返って来たのはニノの声で…
俺はガックリと肩を落とすと、開いた手で前髪を、掻き上げた。
「ニノか…。何の用? つか、お前智と会ってたの?」
「うん。さっきまで店にいたんだけど、ちょっとあってさ…」
その”ちょっと”が智の帰りが遅い理由なのか?
「あのさ、うっかり喋っちゃってさ、翔ちゃんのこと…」
「俺のこと、って…、お前、あのこと智に喋ったのか?」
電話の向こうで、ニノが縮み上がってるのが分かる。
「だから、ごめんてば…」
別にニノが謝る必要はない。
元々は、智に隠し事をしていた俺が悪いんだから。
「もういいよ。で? 智が店出たのって、どんくらい前なの?」
そうだ、問題は俺の“隠し事“ではなくて、今だに帰って来ない智の行方だ。