第15章 Op.15 アルバムリリース
「お気に入りのバニラキャンディだそうです。直接渡したかった、と言っていましたよ」
「……ルイが…」
しばしキャンディの瓶を眺めていたレオナを
ジルは優しく笑みながら見守る。
「…お忙しいとは存じますが……」
「…あ」
はっとなってレオナは顔を上げる。
ジルは微笑みながらレオナの頭をそっと撫でた。
「クリスマスの頃には、一度王宮にいらして下さい…皆、貴女に会いたいと願っていますよ」
「……はい」
「いつでも、待っていますから」
ジルの優しさがふっと胸の中を温かくする。
「ジル様、王宮の皆様にもよろしくお伝えください。私も…皆さんに会いたいです」
ジルはにっこりほほ笑むと
「……では、お仕事の邪魔になってはいけませんから、私はこれで失礼しますね」
そう言ってスタジオを後にしていった。
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ケイが休憩時に持ってきてくれるのは
ジルが差し入れてくれた、ロベールさん特製ハーブティだ。
とても良い香りがして飲みやすい。
そして喉が本当に楽になる。
「王宮の皆さん、本当に優しいですね」
「うん…ありがたいよね」
ふっと微笑むレオナをケイは優しく見つめた。
「レオナさん、嬉しそうですね」
「……えっ?」
「王宮の皆さんに会いたいですか?」
「…うん、でも忙しいし…クロードにも王宮へ行くなって言われてるから…」
「え?何でですか?」
その本当の理由は言うことができず、レオナは曖昧に笑った。
「まぁ…王宮って居心地いいから…仕事にさし障るってことだよ」
ケイは、少し寂しげに笑うレオナの肩を掴んだ。
「え?」
「……レオナさん、任せて下さい。今すぐは無理ですけど、絶対何とかします。ワールドツアー前に必ず王宮に連れていきますから!」
「……ケイ…」
「クロードさん、忙しいから気付かれませんよ!大丈夫です!」
二人は顔を見合せてはにかんだ。
これは二人だけの、特別な
『秘密の約束』だった。