第12章 Op.12 真夏の夜の調べ・2
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大広間。
演奏会の関係者全員が集っての打ち上げパーティだ。
アップスターレコード社の人間から
王宮メンバー、王宮関係者
来賓の貴族など
会場は多くの人でにぎわっている。
「カイン、今日の演奏すごかったよ」
プリンセスはカインと一緒にお酒を酌み交わしている。
「たりめーだろうが。俺様を誰だと思ってる」
他にもジルやユーリ、アランやレオも
それぞれ会話やお酒を楽しんでいるようだった。
(あれ……)
クロードは社長やケイと話しこんでいるが
ルイの姿は見当たらなかった。
(ルイ…帰っちゃったのかな)
あまり人混みが得意そうではないルイ。
視線を泳がせても見当たらない。
(…あれ)
ふとバルコニーへの扉が少し開いており
カーテンがはためいているのが見えた。
レオナはそっと近づき、外を覗くと
そこにはルイが一人たたずんでいた。
(いた…)
レオナはバルコニーへの扉に手を掛けようとして
クロードの言葉を思い出してしまう。
「スキャンダルになるようなことはするな」
(二人きりでいたりしたら…迷惑かかるかな)
掛けた手を引っ込めようかとためらっていると
ルイがふと後ろを振り返った。
(あ…)
ルイと目が合う。
無表情に無視されるかと思ったが
意外にもルイは
手招きしてふっと笑んだ。
その笑みにつられて、レオナもはにかんでしまう。
「……お疲れさま」
「ルイ…今日はありがとう」
レオナはルイの隣に並んだ。
「…子どもたち、楽しそうだったね」
「うん、そうだね…また一緒に歌いたいな」
「それ、喜ぶと思うよ」
簡単には叶わないことだが
レオナは素直な思いを口にしていた。
「私、改めて歌が好きだと思えた。みんなのおかげでいろんな曲に挑戦できたし…すごく楽しかった!」
「そうだね……俺も」
バルコニーの手すりを掴んでいたレオナの手に
ルイはそっと自分の手を重ねる。
「……!」
どきりとして、ルイの顔を見上げる。
「俺も…楽しかった……」
「ルイ……?」
スタジオでのことが頭をよぎる。
…ルイの顔が近づき、レオナに影を落とした。