第7章 Op.7 来訪者
レオナの従姉妹は
壁にもたれかかりうなだれる彼女の胸ぐらを掴んだ。
「今まで面倒見てやった恩も忘れて、礼もなしにいなくなるなんて、いい度胸してるよねぇ?!」
帽子のつばから覗く従姉妹の顔は
鬼のような目つきだった。
寒い冬の日に
納屋に閉じ込められたこと
食事を与えられず
家から締め出されたこと
理由なく
叩かれたこと
その目を見た瞬間に
レオナは一気に過去に引き戻される感覚に陥る。
「今まで稼いだ分の金はどこにやってんだい!」
祖母が後ろで喚く。
「そんな服着て贅沢して…少しは私たちに返そうって気にならないのかい!この恩知らずが!」
祖母は杖でレオナの脚を思いきり叩いた。
「……っ!」
膝に当たり、ぐらっとよろける。
「今まで稼いだ金持ってさっさと戻ってきなさい。そうすれば今回のことは許してあげるから」
そう言って従姉妹は
レオナの腕を引っ張った。
脚の力がうまく入らず
#NANE1#はよろけたまま地面に倒れ込んだ。
「何やってんだよ!このグズが!」
倒れたレオナを、祖母は再び叩く。
「さっさと立て!歩くんだよ!!」
「………や…」
か細く、掠れた声が、
レオナの唇からこぼれた。
従姉妹は倒れたレオナの腕を
なおも引っ張る。
「……や…い、や…………」
涙があふれ、抵抗しようとするが
身体に力は入らないし
大きな声も出せなかった。
どんなに頑張っても
声がうまく出ない。
「……や……やめ、てぇ………」
暗い空からは
ぽつりぽつりと
雨が落ちてきた。
「さっさと歩きなさいよ!なにやってんの!!」
苛立つ従姉妹の声がこだました
その時だった。
「おい…そこでなにやってる」
低く、澄んだ声。
冷たく響く、声が。
「は?誰よあんた」
「俺はこの子の保護者だ」
ライトグレーのハットから覗く
ダークパープルの瞳が
これまで見たことないほど冷えきって
従姉妹を見下ろしている。
「は?笑わせないでよ…私たちはこの子の家族よ?保護者は私たちの方よ!」
クロードは従姉妹の背後でうずくまっているレオナを見やり言い放つ。
「泣かせて暴力振るうのは…保護者のやることじゃないだろうが」