第7章 Op.7 来訪者
行きつけのスーパーで野菜をいくつか買った後
レオナは家に向かって歩き出した。
(家に残ってた材料とこれでスープでも作っておこうかな)
温かいスープがあったら喜ぶかな…
なぜかクロードのことを考えてしまうレオナは
自分で自分が分からなくなっていた。
(…まぁ、クロードには日頃お世話になってるし…)
言い訳じみた考えがよぎる。
「あれ…」
ふと空を見上げると
さっきまでのまぶしい日差しは全く見えなくなり
今にも降り出しそうな曇天が広がっていた。
(急いで帰らないと…雨が降りそう)
レオナはヒールをカツカツ鳴らしながら家路を急いだ。
人通りが殆どない路地にさしかかったとき
…急に後ろから声を掛けられた。
「…レオナ?レオナだよね?」
……レオナはその声を聞くと
身体をこわばらせ、その場で固まった。
血の気が引くのが分かる。
舞台に上がった時とは違う
冷たい氷水の中に放り投げられたような
そんな感覚だった。
振り返ることもできない。
「…レオナだね!!」
もう一人の声。
……ウソでしょ…?
足音が近づき
思い切り腕を掴まれる。
「やっと見つけた…」
その声は
責めるような恨むような
まがまがしい声だった。
レオナの身体が震えだす。
「レオナ!!あんた、勝手に出てって何やってんのよ!」
腕を掴んだ…レオナの従姉妹は
震えるレオナの顔を思い切りひっぱたいた。
その衝撃でサングラスが地面に落ちる。
従姉妹の後ろには初老の女性…レオナの祖母が立っていた。
「…レオナ、なんなんだいその恰好は…みっともない」
祖母は汚いものを見るような目で吐き捨てるように言った。
「派手な化粧してそんな服を着て…娼婦にでもなったのかい!」
レオナは震えが止まらず
顔を上げることができないまま固まっていた。
「勝手にテレビなんか出てたまたま運が良かっただけで、調子に乗ってんじゃないわよ!」
従姉妹はレオナを壁に突き飛ばした。