第7章 Op.7 来訪者
クロードと最後に会ったのはいつだっただろうか。
レオナは思い出そうとする。
(確か2週間前にスタジオ徹夜明けで朝戻った時に…)
王宮のアトリエに出かけるところだったクロードとすれ違ったんだっけ。
(そんな感じの顔の合わせ方ばかりだったけど…)
明日は、家で待ってるって言ってた。
それが何を意味するのか
レオナは複雑な気持ちになった。
また、抱かれるのか。
拒みたい思いと、拒めない現実と
僅かに感じる切なさのような痛み。
その理由は分からないまま
レオナは次の現場に向かって行った。
次の日
夏を予感させるような熱い日差しが降り注いでいた。
レオナはつばの広い黒い帽子をかぶり
シフォンブラウスにスミレ色のタイトスカートを履いていた。
ゴールドの装飾のついたパンプスはヒールが高い。
もうヒールの高い靴にもだいぶ慣れてきた。
もともと、少し大人びた顔立ちのレオナは
そういったエレガント調の服装が良く似合っていた。
逆に、カジュアルな服装をすると
よほど気をつけないと
大人が子供服を着ているような
ちぐはぐな印象になってしまう。
事務所の会議室でのミーティングを終えたレオナとケイは、社屋から出てあまりの日差しの強さにげんなりした。
「うわー…これは暑い…。レオナさん、次の予定、夕方までは何もないですけど、どうします?」
「あ、じゃあ、家に帰っててもいいかな?クロード帰ってくるっていうから少し片づけたいし、ちょっと空気も入れ替えないと…」
さんさんと降り注ぐ日差しを仰いでレオナは言った。
「家までお送りしますか?」
「ううん、大丈夫。買い物して帰るから」
「わかりました。サングラス、お店の中でも忘れないでくださいね!」
すっかり時の人になってしまったレオナは、サングラスなしで外を出歩くことは自殺行為に等しかった。
数日前、まだあまり自覚がなかった頃にうっかりサングラスも帽子もかぶらずにスーパーを訪れた時
営業妨害と訴えられかねられないほどの混乱を招いてしまったのだ。
(今日は大丈夫…)
改めてレオナはサングラスをかけて、街を歩き出した。