第5章 Op.5 再会の晩餐
城下に初めて来た初日に
初めて『男性』を知り
翌日にはレコード会社と契約して
王位継承者と一緒に食事をしている…。
我ながらこのジェットコースターのような展開に
レオナは夢を見ているような気分が抜けきらなかった。
王宮の人々はもっと
厳格で、まじめで
気軽に話などできない雲の上の人たちだと思っていたが
目の前で談笑する皆は
レオナと変わらない
気さくで温かくて、優しい人たちだった。
(なんか…居心地いいな…)
レオナは自然と口角を上げてしまう。
「……なんか、嬉しそうだね」
それまで殆ど口を開かなかったルイが、
突然レオナに話しかけた。
「えっ…そ、そうですか?」
「うん…にやにやしてる」
「え…にやにや?」
レオナは顔を赤く染めた。
「昨日は…真っ青な顔で舞台に立ってたのにね」
ルイは微かに口角を上げて言った。
「なんだよ、俺も審査員に入りたかったなぁ」
「レオ、いち官僚が審査員などあり得ませんよ」
ジルの突っ込みがすかさず入る。
「でもさー、なんか、一晩のうちにずいぶん雰囲気変わっちゃったね?クロードの服のせい??」
ノアの指摘は妙に鋭い。
「スタジオの舞台で見た時は、素朴で可愛い感じだったけど…なんか今は色っぽく見えるー」
「ノア、女性に対してそのような表現は控えた方がよろしいですよ」
またもジルの突っ込みが入る。
顔を赤くして俯くレオナに
ルイが淡々と言った。
「女性は…心の変化が外側に出やすいから」
それは誰に向けられたどういう意味の言葉なのか
真意を受け取った者はそこには誰もいなかった。
食事を終えると
ジルは公用車を手配しレオナを家に送り届けるため同行した。
ルイは自室に戻るため、一人廊下を歩いていると
ちょうどアトリエへ戻ろうとするクロードに出くわした。
「ルイ」
「…何」
クロードが声を掛けてくる。
「レオナ、来てたんだろ?ジルが誘ったんだってな」
「……」
ルイは押し黙って、クロードを見据えた。
「じゃ、俺は仕事に戻るか…」
「ねぇ、クロード」
ルイはクロードの背中に言った。
「……彼女に、何かしたの?」