第5章 Op.5 再会の晩餐
ジルはレオナの顔を覗き込む。
ジルの瞳に、自分の姿が映るほどの距離の近さに
レオナはどぎまぎした。
「貴女の歌が…また聴けるのは大変楽しみです」
「…ありがとうございます」
つい視線が泳いでしまう。
「さて…つきましたよ」
ジルはさっと顔を離すと
レオより先にさっとレオナをエスコートした。
先を行くレオナとジルの背中を見て
「…なんだかんだ、おいしいとこ持ってくんだよね、ジルは」
レオの独り言は誰の耳にも届くことはなかった。
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「あれー、ルイしかいないの?」
王宮の食堂。
すでにテーブルについていたルイに
ノアの能天気な声が掛けられる。
「……」
「カインは?」
「…プリンセスと食事に出かけた」
「ふーん、順調だねー」
ノアがルイの向かい側に座ろうとすると
「あーノア様待って!!」
ユーリが飛び込んできてそれを制止した。
「え?なに?」
「今からお客様が来るから…ノア様はルイ様の隣に座ってください?」
「えー?誰が来るの?…って、もう行っちゃった」
ユーリはノアの質問に答えることなくその場を去ってしまう。
「……」
ルイは淡々と食事を進めていた。
「……あ」
ほどなくして現れた来客に
ノアは声を上げた。
「あー!レオナー!」
ノアは立ち上がると、中に入ってきたレオナに駆け寄り抱きついた。
「わ…!」
「会いたかったよー」
「…ノア」
ジルの咳払いで、レオナを解放する。
「ねぇ、レオナ、俺の向かい側に座りなよ?こっちおいで?」
ノアは無邪気に笑いながら、レオナの手を引っ張った。
「…ノアの方がよっぽど危険じゃないの?これ…」
後から入ってくるレオが、ジルに言う。
「……」
ジルはレオの言葉には答えず、着席した。
「……」
黙って食事を続けているルイを見つけると、レオナは声を掛けた。
「あ、ルイ様…こんばんは」
ルイは黙ってレオナに一瞬視線を送るが
すぐに伏せて黙々と食事を続けた。
(…き、機嫌悪いのかな)
ノアに言われるまま、レオナは向かい側に座った。