第5章 Op.5 再会の晩餐
クロードは少しだけ振り返り
肩越しに答えた。
「何の話だ?」
「……」
ルイは黙ってクロードを見つめていた。
クロードもそんなルイを黙って見つめる。
「……」
長く感じる沈黙をやぶったのはクロードだった。
「…俺は、家に帰りたくない事情を抱えてるあいつの力になりたいだけだが?」
「…ふぅん、そう」
ルイは目を伏せると、そのまま去ろうとした。
「…ルイ」
今度はクロードが呼びとめる。
「…お前には感謝してるよ、あいつにきっかけを与えたんだからな」
クロードの妖しい笑みに答えることなく
ルイはその場を後にした。
Louis side----
彼女の顔を見たとたん、ルイは直感で悟った。
「……」
彼女から溢れだす
昨日までなかった色香は
クロードから借りたであろう服のせいでもなく
昨日とは違ったメイクのせいでもなく
下ろされたダークブロンドの髪のせいでもない。
(クロードに……抱かれたんだ)
「ルイ様…こんばんは」
控えめに挨拶した彼女の顔を
ルイは直視することができなかった。
「……」
彼女の柔らかな眼差し
潤んだ唇
透き通る首筋
一瞬見ただけで
はっきりと脳裏に焼きつく。
ノアやレオを中心に談笑するレオナを目の前に
ルイは何も言えずに静かに食事を進めていた。
(昨日とは…まるで別人)
昨日はスタジオの舞台上だったとはいえ
彼女の姿は
どちらかというと「卑屈」な顔をしていた。
何か今まで
とても辛い状況に置かれていたような
そしてそんな自分を恨んでいるような
そんな出で立ちだった。
ところが今は
普通の女の子として
幸せそうに微笑んでいる。
そんな風に彼女を変えたのが
自分の力ではなく
クロードの力であることに
ルイは胸の奥に妙な苛立ちを感じた。
このままだと
彼女は手の届かないところに行ってしまうだろう。
(そんなことは別に構わない…でも)
なんだろう。
この感情は。
ルイは得体のしれない自分の中の気持ちに
名前をつけることができないまま
彼女の顔をただ
見つめることしかできずにいた。