第5章 Op.5 再会の晩餐
レオナは話題のパンケーキを堪能した後
レオの案内で城下を回った。
「少しくたびれた?」
教会の前の広場で、
レオナとレオは並んで腰かけた。
日はだいぶ傾いてきている。
「でも、城下のことが少しわかってきたよ。案内してくれてありがとう…」
「どういたしまして…」
レオはそっと微笑むと
レオナの頭を優しく撫でた。
「っ……」
レオナは少し顔を赤くする。
「レオナちゃんってさ…」
緋色の瞳が覗きこんでくる。
「綺麗な顔、してるよね」
「えっ……そんなことな…」
「…言われない?」
「い、言われない言われない…」
レオナがとっさに俯くと
頬に手が添えられ、顔を上げさせられる。
「あ……」
「もっと、見せて?」
緋色の瞳がせまり
レオの吐息を肌で感じるほどの距離に迫ってくる。
その時だった。
「そこで何をやってるんですか?レオ」
後ろからの声に
レオがびくりと身体を震わせた。
レオはゆっくり振り返る。
「何って…デートだけど?」
レオの振り返ったその視線の先には
紫色のジャケットに身を包んだ背の高い男性がたたずんでいた。
「あ、あなたは…」
レオナが声を上げると
ジルもレオナの顔を見て驚いてみせた。
「貴女は確か…レオナさん」
「あれ、ジル知り合い?」
間に挟まれたレオは二人の顔を交互に見る。
ジルはやがて険しい顔でレオを見やる。
「レオ…彼女はいち官僚の貴方が遊んでいい相手ではありませんよ」
「え?」
「彼女はこれからウィスタリアを代表する『歌姫』になられるお方です」
「え?!」
レオは目を見開いてレオナの方を見た。
「ど、どういうこと?」
「いえ、ジル様…歌姫なんてそんな」
ジルはレオナの前までやってくると
肩を軽く掴む。
「さきほどクロードから契約の件など話を伺いました。それから…しばらくはクロードの家に住むことも」
「え?!クロードの彼女なの?!」
レオは更に驚いたように声をあげる。
「ち、ちが…」
「ビジネスパートナーですよ。でも…」
ジルはレオを軽く睨み少し微笑む。
「手を出したらおそらく…報復されますよ」