第5章 Op.5 再会の晩餐
「あ、あの…」
「観光の人?」
戸惑うレオナに、緋色の瞳が優しく微笑んだ。
「あ、いえ…でも地図が欲しくて。本屋さんとか、この近くにありませんか?」
「うーん、この辺にはないかな。よかったら本屋まで案内するよ。俺も行こうと思ってたから」
銀髪の男性はそう言うと
レオナの手を掴んだ。
「えっ!」
「こっちだよ!」
突然のことに驚きながらも
わるびれるそぶりのないその男性に、レオナはついていくしかなかった。
少し人通りのある通りにさしかかり
男性は一軒の店の前に来た。
「ここ、本屋さん」
「あ、ありがとうございます…」
本屋さんの前には
観光客向けに地図やポストカードの並ぶ棚がある。
「これで、大丈夫かな?」
男性は城下街の地図を取ると、レオナにさし出した。
「はい、これがあれば大丈夫そうです…本当にありがとうございます」
レオナは深々とお辞儀をした。
「うん、あ、えーっと…俺、レオ。君は?」
レオ、と名乗る男性は手を差し出す。
「…レオナです」
「レオナちゃんか!よろしく!」
レオナは差し出された手を取る。
「…ねぇ、レオナちゃん」
レオは、ふいにその手を握り返す。
「え?」
「この後…ヒマ?」
緋色の瞳が、いたずらに光った。
「ほ、ほんとにいいんですか?!レオさん!」
ウィスタリアで話題のオープンカフェ。
入口には行列ができていたが
なぜかレオが現れると
その列を飛ばして、中へ案内してくれた。
「大丈夫だけど…」
テラス席に座ったレオは、急に神妙な面持ちになって続ける。
「……さん付け、しないでね。あと敬語もナシ」
「えっ」
「そういうガラじゃないんだって、俺」
少し軽い感じのする人ではあったが
レオは優しく笑って言った。
「今、この店のパンケーキが大人気なんだよ」
「え…でもどうしてレオ、は…??」
列を飛ばして入れた理由を聞こうとするレオナにレオはウィンクを一つすると
「まぁ、職業特権ってやつかな」
ますます謎めいたことを言った。