第1章 Op.1 原石発掘
審査員が「3人」と言えば
ウィスタリアではこの3人以外考えられない。
王位継承候補者の
カイン、ルイ、ノア。
幸い
ルイとノアは音楽の才能を持ち合わせているし
カインには……毒舌の才能がある。
この番組に必要なものは
すべて揃っていた。
オーディションには
音楽からダンス、特殊技能、パフォーマンスなど
さまざまな分野の人たちが
ウィスタリア中から集まってきていた。
音楽部門ではレオナを含めて5人。
全員が、音楽学校やライブ活動、講師などをしているプロばかりで
一般人はレオナだけだった。
(しかも……)
レオナはお世辞にも
テレビに出る格好ではなかった。
(見た目からして……)
「見た目からして、負けだなこれじゃ」
心の声と重なった言葉が
レオナの頭上から降ってきた。
見上げると
そこには一人の男が立っていた。
男は、レオナの顔を見た瞬間
一瞬目を見開いて驚いた様子だった。
「……こりゃ手強いが、まぁギリギリ放送できるレベルには、してやるよ」
そう言うと
いきなりレオナの髪を掴み
「きゃっ!!な、なんですか」
顔周りを覆っていた髪を一気に全てまとめて一つに束ねた。
鏡越しに男が彼女の顔を見る。
「……ああ。綺麗だ」
シルバーの短髪に
ダークパープルの瞳が妖しく微笑む。
その言葉に
レオナは僅かに頬を染めた。
「……その眉毛を何とかしたら、な」
最後に付け加えられた一言に、レオナは頭上からたらいが落ちてきたような気分になった。
銀髪の男性は
あっという間にレオナの髪をまとめ上げると
シルバーチェーンの装飾とタータンチェックの端切れのついた髪留めでポニーテールにした。
少しだけサイドから後れ毛をとり
耳にシルバースカルのイヤリングをつけてくれた。
「これ、俺の私物だから後で返せよ?」
「えっ?!そんな、いいです…」
「いいです、じゃなくて、それが俺の仕事だ」
「え?」
振り返ると
後ろのハンガーラックから慣れた手つきで衣装を出す。
「あとはこれで…」
黒いフリンジの入ったジレを
Tシャツの上から羽織らせてくれた。
「ああ、これでいい」