第4章 Op.4 契約成立
「王宮の…人間にですか?」
驚くジルに、社長が頷く。
「王位継承権を持つ御三方を含め、皆様は大変音楽に長けてらっしゃる。教養の範囲にだけ留めておいでなのは非常にもったいない…」
社長は続けた。
「城下の者たちにとって王宮の皆様は憧れであり愛されている存在です。この音楽祭を通じて少しでも王宮の皆様と国民たちの橋渡しになれば、と考えております」
ジルは再び企画書に目を落とし、ページをめくる。
「……孤児院の子どもたちの演奏も取り入れるのですね」
「ええ。音楽祭ですから、老若男女、身分を問わずに…演奏する側と聴く側両方に参加できる機会を設けたいのです」
ジルは少し安堵したように笑みを浮かべた。
「チャリティの要素を入れて頂けると、こちらとしても協力させていただきやすいですね」
「分かっていただけて良かった」
社長は嬉々として答える。
「分かりました。王宮としてこの企画の全面的なバックアップを前向きに検討いたしましょう」
「感謝申し上げます」
社長は深々と頭を下げた。
「ところで……」
ジルは企画書を閉じ、顔を上げた。
「昨日の優勝者の…レオナさんは、ご参加されるのでしょうか?」
その問いには眼鏡の男性が答える。
「…今、その交渉をわが社の方で進めております。もちろん参加の方向で進めてまいりますので」
ジルはにこやかに頷いた。
「…彼女はもう時の人ですから…音楽祭を彩る素晴らしい歌を歌ってくれるでしょう。期待しています」
社長とジルは再び握手を交わした。