第4章 Op.4 契約成立
「どういう…こと?」
「お前が音楽界での地位を築いたのは俺の支えだ、ということを世間に公表しろ」
「……」
クロードの真意が分からないまま
レオナは曖昧に頷く。
「…まぁ、この条件はお前が『世界の歌姫』にならないことには成立しないからな…そのためには俺は全力を尽くす」
そう言ってクロードはふいに
レオナの額にキスを落とした。
「……っ!」
赤い顔で固まるレオナを尻目にクロードは
テーブルの上に置かれた携帯電話を取った。
それはレオナの携帯電話だ。
「さて……そのための第一歩を今日はしてもらおうか」
「え?」
クロードに手渡された自分の携帯を見て
レオナは唖然とした。
「な、なにこれ……」
昨夜から知らない番号からの着信が
何十件にも渡って残っている。
「…お前の才能に反応した、ハイエナたちだ」
クロードがそう言うそばから、また別の番号から着信が入る。
「えっ、ど、どうしようクロード…」
うろたえるレオナから
クロードは携帯を取り上げると
ピッ
「あ」
電源を切ってしまう。
見上げたクロードの顔は
また妖しげに笑っていた。
「……とりあえず、朝飯。話はそれからだ」
*********
王宮、応接間。
スーツ姿の男性が二人座っている。
一人は60代くらい、白髪交じりの男性。
もう一人は40代くらいの眼鏡を掛けた男だった。
扉がノックされ
一人の人物が現れた。
「お待たせいたしました、社長」
入ってきたのはジルだった。
「ジル殿、お忙しい中申し訳ありません」
白髪の男性は温和そうな笑みを浮かべた。
二人は握手を交わす。
「早速お話を進めましょう」
ジルは二人に掛けるよう促すと
自分も向かいに着席し、テーブルに並べられた資料に目を落とした。
「この度、わがプロダクションの主催で、『夏の音楽祭』というものを企画中でして…」
眼鏡の男が説明を始めた。
「…昨夜のノア様とレオナさんの演奏、大変素晴らしかったです。そこで提案なのですが…」
ジルが次を促すように視線を送る。
眼鏡の男は続けた。
「会場はここで…王宮の皆さまにも演奏をお願いしたいのです」