第4章 Op.4 契約成立
「……ん」
目を覚ますと、見知らぬ天井が飛び込んできた。
僅かに身体を身じろぐと
ベッドの中に、裸で寝ていたことに気づく。
(え……?)
レオナは飛び起きた。
朝日の差しこむ部屋。
横には乱雑に置かれた靴や服、生地…トルソーやパターンやデザインの紙が散らばる机がある。
(そうだ……昨日…)
昨夜のことを思い出す。
(そのまま…あれ、どうしたんだっけ)
「起きたか」
「え?」
階段を上って声を掛けてきたのは
クロードだった。
クロードは妖しげな笑みを浮かべて言った。
「…シャワー浴びて来い。そんな格好のままだと…昨日の続き、するぞ?」
「……っ!」
言われて初めて、レオナは慌てて胸をシーツで隠した。
シャワーを浴び終えると
「雑誌の撮影やコレクションで使い終わった服や靴、山のようにあるから適当に使え」
と、クロードが言った。
言われるままにクロードの仕事場にある服を借りて、階下に降りる。
「あの…クロード」
ソファに座りコーヒーを飲むクロードに、レオナはおそるおそる声を掛けた。
「ん、なんだ?」
「私…ここにいていい?」
「………」
クロードが振り返る。
笑みのない、無表情な顔だった。
「意味…分かって言ってんだな」
「仕事見つけて、部屋借りるまでの間だから…」
レオナは目を伏せて、少し沈黙したが
顔を上げてまっすぐクロードを見つめた。
「私はもう、家には帰らない。決めたの。母の言葉を信じて…やれるとこまでやりたい」
するとクロードは口角を上げて答えた。
「じゃあ…俺と契約するか」
「け、契約?」
クロードはコーヒーを一口含み立ち上がると、レオナの前に立った。
「俺はお前にこの家と、着る服、その他生活に必要なものは全てバックアップしてやる」
クロードはレオナを見下ろしながら続ける。
「…その代わり、俺が求める時は昨日の晩のように言うことを聞いてもらう」
その言葉にレオナの顔がさっと赤く染まる。
「それと……もう一つ」
「え…?」
思い当たることのない続きの言葉に
レオナは首をかしげた。
「お前が世界の歌姫になった時に…俺の存在を明かせ」