第23章 Op.23 宣言式
再び目を開けるとそこには
煌びやかな大広間と
エスコートに手を差し伸べてくれているノアの姿があった。
「…レオナ?行こ?」
「………うん」
レオナは手を取って歩き出した。
会場からは微かに囁かれる声がする。
「ねえあれって…」
「そうだよ、歌手のレオナじゃないか?」
「事故に遭ったって聞いたけど」
初めてあの舞台に立った時
観衆たちのざわめきが
自分を針のむしろの上で追いつめていたように感じていた。
でも今は違う。
その囁き声の後ろでは
愛している人たちが見守ってくれている。
あの時のように、一人ぼっちじゃない。
「レオナ?」
小さな声でノアが呼ぶ。
レオナは黙ってうなづいた。
ノアのピアノが
ゆっくりと奏でられていった。
(ノアのピアノ…とても綺麗になった…)
片手をピアノに添えながら
レオナは目を閉じて音を聞き
そして
ゆっくり息を吸い歌い出した。
「When I am down and, oh, my soul, so weary...」
数年前に世界的にヒットした曲
「You raise me up」
その歌詞の内容は
レオナの思いそのものだった。
一人ひとりに思いを伝えるように
レオナは歌っていく。
(レオ…いつも優しくしてくれてありがとう)
ジルと並ぶレオがにこっと笑う。
(ジル様、貴方にも助けられました)
ジルは力強くうなづく。
(ユーリの紅茶は最高)
ユーリはウィンクする。
(カイン、プリンセス…この国をお願いします)
プリンセスは手を振り、カインは口角を上げる。
(シド…来てくれたんだ……また一緒に演奏しようね)
一瞬目を合わせ、ふっと笑ってまた逸らす。
(あ……)
壁際の隅にたたずむのは
クロードとケイだった。
(ケイ……ありがとう…)
ケイは何度も目頭を押さえながらこちらを見ている。
(クロード……ここにいるのはあなたのおかげ)
腕を組みながら、余裕の含んだ笑みを浮かべている。
そして
「You raise me up, so I can stand on mountains」
(ルイ…)
ルイは微笑みながら頷いた。