第20章 Op.20 Interval
ルイは早速執務室にこもり
溜まっていた案件や書類に目を通しながら
少しずつ仕事を進めていた。
「ルイ様、ご昼食はいかがされますか」
「…今日は天気がいい。外でレオナと取りたいんだけどいいかな」
「かしこまりました。ご用意させて頂きます。レオナ様ももう間もなく御支度が整うところです」
ルイはうなづくと再び書類に目を落とした。
数日前
病院でいつものように二人で過ごしていた時
レオナはルイにある頼みごとをしていたのだ。
「お願い事って何?」
黒板に書かれた文字を読んで、ルイは尋ねた。
レオナはさっと消すと更に書き込んでいく。
『髪を切りたい』
「えっ……いいの?」
レオナは頷く。
ルイは長いレオナの髪を指ですくい
すっと梳いた。
「綺麗なのに…本当にいいの?」
するとレオナは少し不安げな色を瞳に宿して
再び黒板に文字を走らせる。
『ルイは、長い方が好き?』
「えっ」
ルイは目を見開いてレオナの顔を見る。
レオナは少し顔が赤いようだった。
「俺は……レオナが好きだから、したいようにすればいいよ」
レオナの顔は更に赤くなる。
「変わりたい、んだよね?」
ルイは察するように尋ねた。
レオナは首を縦に振る。
「じゃあ…引っ越したらすぐ切ってもらえるように手配しておく…楽しみにしてて」
ルイの言葉にはにかむレオナの頬を
ルイはそっと指で撫でた。
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ハワード家の庭は王宮のそれよりはもちろん小さいものの
とても手入れの行き届いた清潔感のある美しい庭だった。
刈りそろえられた芝生の上に
真っ白なテーブルとイスが用意され
スカイブルーのテーブルクロスの上には
昼食の準備がなされていた。
久しぶりの我が家の庭を
ルイは掛けながらぼんやり見つめていた。
かたん。
すると背後から、庭へ下りる扉の開く音がする。
ルイは振り返り
その姿を見て、目を見開き止まってしまった。
「あ……」
うち巻きのふんわりしたボブショートに
少し重ために作られた前髪
シャーベットブルーのワンピースに
白のカーディガンを羽織っている。
ルイは自分の顔が染まっていくのを感じていた。