第2章 Op.2 原石研磨
声をかけてきたのはカインだった。
「…なんだこりゃ、昼間とは別人だ、と思ったら、お前の仕業かよ、クロード」
「当たり前だろ」
カインは、すっと鋭い視線をレオナに向けた。
「……」
何か言わなきゃ、とレオナが目を泳がせていると
「…馬子にも衣装」
「えっ」
カインはにやりと笑ってそう言った。
「それはスタイリストへのほめ言葉として受け取っておくよ、カイン」
クロードは余裕のある笑みを見せて応えた。
(ん…今私すごくバカにされたよね?)
しかし曲がりなりにも王位継承者であるカインに
失礼なことも言えず
レオナはただ黙ってその言葉を受け入れていた。
その時
すぐ後ろから声がした。
透き通った、低い静かな声。
「…どんなに飾っても」
レオナが振り返ると
「あっ……」
プラチナブロンドの髪
アイスブルーの瞳の。
そこには
ルイが立っていた。
スタジオで
遠く離れた場所で対峙した時よりも
ルイは近くにいて
その姿は女性から見ても
美しく、輝いていた。
(わ……綺麗…)
「どんなに飾っても、何かできなければ役に立たない」
相変わらず
無表情のまま語られるその言葉の真意は
レオナにはよく分からなかった。
「ルイ、来ていたのか。今日は審査員、ご苦労だったな」
クロードは慣れているのか
まったく物おじせずルイに挨拶する。
「…クロードも。彼女をシンデレラにするなんて、とんだお人好しだね」
ルイはレオナを冷たく一瞥し、そう言った。
クロードは苦笑まじりに答える。
「いや…俺は『原石』を磨くのが好きなだけだ。最初から綺麗なモンには興味ない。つまんないからな…」
少し挑発的な目でそう言うと
「ルイ、お前もそういう考えだと思っていたけど?」
「……」
ルイは黙って目線をそらした。
「あ、レオナー!来てたんだー!」
そこにひと際能天気な声が響いた。
「ノア」
クロードが手を上げて応えた。
ノアは楽譜を手に持っている。
「ね、レオナ、歌ってくれない?」
「え?え、今??」
「そ。綺麗な格好の君と一緒に演奏したい」
一緒……?