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【100プリ】Wistarian Diva

第19章 Op.19 事故



Claud side----



久しぶりに帰った自宅は
薄暗く、少し埃っぽい香りがした。

ながらく主人が不在だったことを感じさせる空気だ。


明かりもつけず、クロードはソファに身体を沈みこませた。


「………」


事務所での社長とのやりとりがまた頭の中にこだまする。









「だから俺は言ったんだ、強行すぎる、と」


クロードの荒げた声も
社長には全く響いていなかった。


「甘いよ、君は」


社長は冷淡に言い放つ。


「いいか、この程度のスケジュールをこなせずに世界に売り出すのは事実上不可能だ。
今まで何人もの音楽家が、自分のメンタルの弱さでその身を滅ぼしている。

いいか、音楽家というのはな
その精神のタフさも含めての『才能』だ。

ついて来れない奴はもともとそういう『器』じゃないということだ」


畳みかけるようにそう告げた社長は
無機質な顔をしていた。


「世の中の人間をどれだけ多く満足させるかで売り上げが決まる。
レオナは世界の人間を満足させるほどの『才能』はなかったということだよ」


「そんなことはない」


クロードはまっすぐ社長を睨みつける。


社長はその視線を受け止めると、すっと笑った。


「……お前は、自分が『美味しい思い』をする前につぶれたことに腹を立てているだけじゃないのか?」


「………なんだと?」


「確実に自分が『利益』を得たかったから、安牌を提案していたのだろう?…で、結局レオナはつぶれた。
……ふっ、残念だったな?投資が回収できなくて」


クロードの顔に怒りがにじみ出ている。


「…いや、散々『服従』させていたようだから、その分は美味しい思いができたんじゃないのか?」


最後の社長の言葉にクロードは
目の前の机を拳で叩く。


そして燃えるような目つきで睨みつけると



「……レオナを解放しろ」


静かに言い放った。


社長は嫌悪を含んだ目で答える。


「言われなくとも、『歌えない人間』に金を払う無駄はしたくないんでね」











クロードは
思い出したその言葉に
再び怒りがこみ上げるのを止められなかった。


テーブルの上に放置されていたグラスを
思いきり投げる。

割れた音が響き、今度はテーブルを足で蹴り上げた。

「くそっ……!!」
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