第19章 Op.19 事故
「……またか…また俺は…」
(また俺は、守れないのか)
床に散らばるガラス片、
テーブルが倒れている。
(どうして…無理にでもとめなかったんだ)
どうして気付いてやれなかったんだ。
何度も何度も湧きあがる自責の念。
力になってやるどころか
無理をさせて…。
『あの時』と同じことを繰り返すのか。
「お兄ちゃん」
目を閉じると
『あの時』の記憶が微かによみがえってくる。
「お兄ちゃん、最近疲れてない?」
「いや、そんなことはない」
「そう、ならいいけど…いつもお疲れ様!」
「…お前なんか顔色悪くないか?」
「そんなことないよ!私は大丈夫………」
小さな変化に気づくことができず
失ってしまった大切な存在。
その存在とレオナが
被ってしまう。
失うくらいなら
レオナが心から求める場所に
委ねた方がいい。
あいつの求める場所は俺じゃない。
…俺は、守りきれなかった。
また傷つけてしまう前に……
(ルイなら、きっと大切に守れるはずだ)
大切なものを守りきることのできない自分の不甲斐なさと
大切なもののそばにいられない自分の力のなさと
…素直になりきれなかった自分への後悔と。
そんな気持ちがない交ぜになって
クロードの頬を静かに伝っていった。