• テキストサイズ

【100プリ】Wistarian Diva

第19章 Op.19 事故




そこは
今や大物歌手となったレオナが入院しているとはとても思えないような

城下郊外にある小さな病院だった。


病院の受付にいた看護師は
ルイの姿を見るや否や目を見開き驚いている。


「ル、ルイ=ハワード様ですよね!」

待合室にはお年寄りが2,3人いるだけで
ルイの存在には全く気付いていない。


「ここにレオナがいるって聞いたんだけど」


すると看護師は顔色を変えた。

「…いったいそれを誰から…」

「いるなら会わせてほしい」

ルイは真剣なまなざしで訴えた。

「……申し訳ありません、どなたも会わせてはいけない、とクロード=ブラック様に止められております」



「……いや、ルイは構わない、会わせてやってくれ」


その時
後ろから声がした。



「ク、クロード様」

振り返るとそこにはクロードが立っていた。




「クロード……」

ルイはわずかに眉根を寄せてクロードを見やる。

クロードはそんなルイに応戦つもりがない、言わんばかりに
視線を落としてふっとため息をついた。


「ルイ……会ってやってくれ。お前に会えば…少し変わるかもしれない」

「…どういうこと?」

クロードは苦しげな表情で呟くように答える。
「…会えば分かる」

ルイは一瞬掴みかかりそうになりながらも
それを必死に抑えるようにクロードの前に立ちはだかる。


「…アンタがついててどうしてこんなことになってるの?」


「……」


クロードはそれに答えることはなかった。







病院の3階。
殆どの入院患者が2階にいるためか
3階は人の気配がなかった。


殆どの部屋が空室のためか
扉が開け放たれ

廊下は明るく照らされている。


一番奥の部屋の扉だけが
冷たく、静かに閉ざされていた。



(ここ、か)


ルイはその重い扉を、ゆっくり叩いた。



……反応はない。


(寝てる…のかな)



「……レオナ?」

ルイはそっと中へ呼びかけた。



僅かに中で物音がする。

「レオナ…開けるよ?」


ルイはそう言って
そっと病室の扉を開いた。





部屋の中は

白く、無機質で
明るかった。


その
気味の悪いくらい明るい部屋の真ん中
真っ白なベッドの上に

レオナは腰かけて
ルイをまっすぐ見つめていた。

/ 153ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp