第18章 Op.18 Happy New Year
レオナは少女のようなあどけない顔で
目を真っ赤にはらし
頬は涙のつたった痕が幾重にも重なっていた。
「…どうした……」
クロードはレオナを抱きしめようとして
躊躇し、頭を撫でた。
「……眠れない」
「…は?ずっと起きてたのか?」
「……うん…」
クロードは嫌な予感がした。
「……お前…『いつから』寝てない?」
レオナは俯き、沈黙した。
しばらくすると、絞るように小さな声で答えた。
「………1週間、くらい」
「…うそだろ……」
クロードは頭を抱える。
「うたた寝はできるんだけど…夜、まとまって寝れない。1時間寝れるといい方」
「病院は……行ってるわけないか」
「寝なきゃと思うと眠れなくなって、だんだん怖くなって……」
「とりあえず…こっち来い」
クロードはレオナをソファに座るよう促した。
そして隣に掛ける。
「何が不安なんだ」
クロードはそっとレオナの髪を撫でる。
「…わかんない」
俯いたままレオナは答える。
声は僅かに震えていた。
「ツアーが失敗するかもしれない、と思うのか」
「……」
「やり遂げられるか自信がないのか」
「……」
「身体がしんどいか」
「……」
「……全部、か」
ためらっていたクロードは
優しくレオナを抱き寄せた。
レオナがクロードの肩に頭を預けたのを感じると
クロードに少しだけ安堵が生まれる。
「……予定表、今あるか?」
「…え?あ、うん……」
レオナはリビングに置きっぱなしだった鞄から書類を出した。
クロードは予定表に目を通す。
「4日の飛行機でシュタイン入り、6日に本番…」
クロードはそう呟いておもむろに携帯を取り出す。
「……あ、ケイか。寝ているところすまない……悪いが、4日のフライトを一日ずらしてくれないか」
「え?」
レオナは目を見開く。
「ああ…わかってる、すまない。それと、シュタインへは俺が送るから、それまでレオナを預かっていいか?……ああ、そうだ。ケイ、よろしく頼む」
クロードは電話を切ると
ふっと笑んで告げた。
「フライトは5日、それまで…休暇だ」