第18章 Op.18 Happy New Year
Claud side----
(想像以上に疲れてるな…こいつ)
シャンパンを笑いながら煽る
久々に見たレオナの横顔は
以前のような艶がなくなり
少し頬に影があるようにも見えた。
(やはりこのスケジュールは…)
しかし当初の社長の読み通り
アルバムセールスは空前のヒットとなり
最速売り上げ記録を更新していた。
世界中にあのネット映像が出回り
遠方の国にまでその呼び声は響いていた。
(今更スケジュール変更はできないが…)
レオナの笑顔を見るたびに
胸が僅かにきしむ。
シャンパンを開けたため
車は事務所の駐車場に置いて、歩いて帰ることにした。
あれだけのことをしたにも関わらず
「クロードの家に泊めて」と彼女が言ったことが
クロードにとっては意外なことだった。
(俺とのことは…気にしていないのか)
少し複雑な感情が芽生える。
「クロード…ちょっと疲れてない?」
そう問いかけるレオナに
(それはこっちのセリフだ…)
クロードは心の中で突っ込む。
しかしその言葉は
過去の記憶に閉じ込めていた「ある存在」を思い出させる。
(何だよ……余計なこと思い出させやがって)
たわいもない会話を交わしていると
また急にレオナは
「クロード……お疲れ様でした」
(…だからどうしてそういうことを…言えるんだ)
すぐに上手く返すことができず
クロードは視線をそらす。
(俺は無理やりお前を手籠めにして…服従させていたのに…)
過去の記憶や複雑な感情がないまぜになり
クロードの胸が音を立てて軋んでいるような気がした。
…その夜、クロードはリビングのソファで
レオナはベッドでそれぞれ眠った。
夜明け前
階段が微かに軋む音がして
クロードはふと目覚める。
(レオナ…か?)
暗闇の中、目を凝らしても
レオナの姿は見えない。
「……レオナ?」
暗闇へ向かって小声で呼びかけると
ひたっ、と
床に足がつけられる音がする。
「……クロード?」
返事が返ってきた瞬間
クロードは飛び起きて
声のする方へ向かった。
「……おい…」
目がだんだん慣れてきて
レオナの姿が見える。
「……どうして泣いてる…」