第2章 Op.2 原石研磨
クロードは楽屋の時計を見上げると
「ん、まだ時間あるな……おい、リンダ」
「はい」
遠くから返事がして、かわいらしい赤毛の女の子が現れた。
「なんですか、クロードさん」
「この楽屋、ぎりぎりまで借りるから、こいつの顔何とかしてやってくれ」
そう言ってレオナの顔を指差した。
リンダと呼ばれた女の子は
「あ、さっきの歌姫!」
と、驚いたような声を上げると
「私がやっちゃっていいんですか?」
クロードに目を輝かせて尋ねる。
「ああ…お前に頼みたい」
クロードはウィンクして応えると
リンダは嬉々とした表情で
「もう!あなたの顔を見た瞬間から何とかしたいって思ってました!!」
そう言って、ドレッサーの前に強引に連れて行った。
「え、ええ?」
動揺するレオナにリンダは
「まず、このふっとい眉毛、伐採しますからね」
そう言って、小さなハサミを取り出し
瞳の奥を光らせた。
「……は…はい…」
レオナはもう何も言うことができず
大人しくドレッサーの前から動かずにいることにした。
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「なんだか、ウィスタリアにもずいぶん才能のある人がいるんだね」
王宮の大広間。
ウィスタリアの有力貴族や、有名企業、プロダクションの重役たちが集まり
パーティの談笑を楽しんでいる。
少し離れたところにたたずむのは
「100日間のプリンセス」として選ばれたプリンセス・メイカと、カインだった。
「あ?なんだ、珍しいのか」
「私も見に行きたかったな…収録」
「お前がいたところで何の役にも立たねえ」
「ちょ!」
騒ぐ二人の後ろで、咳払いが一つ聞こえる。
「…プリンセス、貴女は別の公務が立て込んでいたでしょう。それにこのパーティもお遊びではないことをご理解くださいね」
「…はーい」
プリンセスの素直な返事ににっこりほほ笑んだ教育係のジルは
紫色のジャケットを翻しその場を去った。