第2章 Op.2 原石研磨
その日の夜は
レオナにとって
人生の全てが変わり…
そして
「本当の人生」が始まった夜でもあった。
結果として
レオナは音楽部門優勝
総合第3位
審査員特別賞を受賞した。
そしてその日の夜
受賞者は王宮に招かれ
パーティが催された。
(まさか優勝すると思っていなかったから…)
本番にTシャツとデニムでやってきたレオナに
パーティに参加できるような服が
あるわけがなかった。
(……とりあえず)
クロードさんにイヤリングを返してお礼を伝えなきゃ。
バタバタと人が行き交う楽屋の中をレオナが探していると
部屋の片隅でクロードは衣装を片づけていた。
「クロードさん」
「ああ…お前か。すごかったな」
クロードは畳んでいた衣装をケースにしまうと
レオナに向き合って優しく微笑んだ。
「本当に、ありがとうございました。クロードさんのおかげです」
「その割には笑われまくってたけどな」
「それは…元がひどすぎたせいです」
クロードは鼻で笑い
「俺の直しがなかったら歌う前に追い出されてたろうな」
「……」
苦笑いで、借りていたイヤリングを返す。
「これ…ありがとうございました」
「ああ。……じゃあ」
するとクロードはジャケットのポケットから何かを取り出す。
「次は…これな」
すると、クロードはレオナにそっと近づき
耳元に何かをつける。
「え?」
「あと、これは衣装部門のだから返してもらって…」
次に髪留めをはずす。
ダークブロンドの髪が一気におろされる。
「…これでいいか」
クロードはトップの髪を上手にすくいあげてハーフアップにすると
どこからか出してきた髪留めで新たにまとめあげた。
「クロードさん、これ」
レオナは横にあったドレッサーの鏡に映る自分を見る。
相変わらずTシャツにデニムだが
耳にはスワロフスキークリスタルのイヤリング
同じ石で装飾されたキラキラに輝く髪留めでまとめられたハーフアップの髪になっている。
「収録にその恰好で来る奴がパーティの服なんてあるわけないと思ってな。貸してやるよ」
「いえ、でも…」
遠慮がちな目を見せたレオナに
クロードはぽん、と頭を撫でた。