第16章 Op.16 イブの晩餐
「ル…ルイ……」
レオナは顔が熱くなっていくのを感じた。
するとルイは左手だけでハンドルを握り
右手をレオナの手に重ねた。
「あ……」
「……今は、これで我慢する」
「ルイ…運転は……?」
「大丈夫、ハンドルちゃんと握ってる」
僅かに口角を上げて言ったその横顔は
少し悪戯な顔をしていた。
久しぶりに感じるルイの体温が
手から少しずつ伝わる。
「………ルイ」
「…ん?」
「……春先まで…会えないと思ってた。その予定だったから」
「うん…」
「だから……その……」
少し口ごもった後にレオナはゆっくり続けた。
「…今、ルイに会えて…すごく嬉しい……」
目の前の信号が赤に変わり
車はゆっくり減速した。
「レオナ?」
「…うん」
ルイの視線が向けられる。
熱っぽい瞳がレオナに向けられている。
「……それって、誘ってるの?」
「え?そ、そんなつもりは…」
「そんなこと言われたら……着くまで我慢できないよ」
ルイはそのままレオナの耳元に唇を寄せて
甘く食んだ。
「…ぁあっ」
思わず甘い声が漏れてしまう。
そのまま耳元で、掠れた声が続く。
「………このまま晩餐会サボって、レオナのこと、さらってもいい?」
「…ぇ……だっ、だめだよ…みんな待ってるから…」
信号が青に変わり、ルイが顔を離す。
「…冗談だよ」
車は再び走り出し、クリスマスを彩る城下の景色が窓の外を流れていった。
(ルイ……)
レオナは高鳴る胸の鼓動を感じながら
ルイが包み込んでくれている左手をそっと握り返した。
王宮に到着すると
城もクリスマス一色に飾られており
いつも豪奢な装飾はより一層絢爛豪華に光り輝いていた。
エントランスに飾られた大きなツリーを見上げて
レオナはため息を漏らす。
「綺麗……」
すると、出迎えの人物の靴音が近づいてきた。
「ようこそ、レオナ様!お待ちしておりました!」
「ユーリ!!久しぶりね!」
ユーリは勢いで再会のハグをする。
「もうみんな待ってますよ!さ、こっちです!」
僅かに眉根を寄せたルイにユーリは悪戯なウィンクをしてレオナをエスコートした。