第16章 Op.16 イブの晩餐
クリスマスに近づくにつれ
雪のちらつく日があったり、と
ウィスタリアの冬は確実に深まっていった。
相変わらず多忙なレオナではあったが
24日の夜のことを思うと
いつもより少しだけ心がワクワクし、力が湧くのだった。
そして
24日が訪れた。
昼過ぎから教会前広場で行われていたイベントに出演し、その後急いで事務所に戻ったレオナは
社屋の裏手に止まるルイの車を見つけた。
(あ、ルイの車……)
公用車でジルかレオが迎えに来ると思っていたレオナは
思わぬルイの来訪に胸の鼓動が高鳴っていった。
(……あ、あの日以来だよね……)
意識すればするほど
どうやって登場すればいいのか迷ってしまう。
(どうしよ…いったん事務所戻って心の準備した方がいいかな……ていうかこの格好って変じゃないかなぁ…帽子取ったほうがいいかな………どうしよう……)
社屋の裏手に続く小道で一人わたわたしていると
「ねぇ…何してるの?」
「うわっっ!!!」
後ろから声をかけてきたのは
ルイだった。
レオナは顔を赤くしながら
ホワイトカシミアのベレー帽を押さえてルイを見上げた。
ぱちっと目が合った瞬間に
僅かながらルイも頬を染める。
「……久しぶり」
ルイは少しはにかみながら言った。
「うん……久しぶり…」
ルイは自然にレオナをエスコートすると
王宮へ向かって車を出した。
「……ケイから連絡が来て、ジルがずいぶん嬉しそうに報告してくれた」
前を見て運転しながら、ルイは言った。
「うん…ケイが休み作ってくれて……」
「……王宮のみんな、レオナに会えるの本当に楽しみにしてる」
ルイの言葉に、ジルやレオ、ユーリやアランたちの顔が思い浮かぶ。
「あ、カインはそうでもないんじゃない?」
「カインは素直じゃないだけ……プリンセスと二人で出掛ける予定だったんだけど、二人共晩餐会に来てる」
「えっ、プリンセスも?!」
オーディション番組の打ち上げで初めて会った時にはまだ100日間のプリンセスだったが、
カインの恋人になりウィスタリア残留のため勉強をしている、と聞いた。
ルイはふっと息をはいて続ける。
「でも……一番待ってたのは……俺だよ?」