第7章 マイスウィートハート【まじっく快斗】
砂糖の星(シュガー・スター)。
発見されているどの針入り水晶よりも透明度が高く、
またその独特の銀とも金とも言えない輝きが混じることにより、
まるで洗練された砂糖の結晶のように見えることから名づけられた。
代々の持ち主はいずれも遊び心を忘れぬようにと
からくり細工師や菓子職人などがこぞって手に入れようとしたという。
と、調べれば必ずそう書かれるこの水晶。
現在の持ち主、つまり二通の予告状を受け取った人物は、
とある玩具メーカーの現社長。
本人曰く、『子供心を忘れるべからず。』の象徴として
この宝石を展示しているという。
子供心とかなんとかを語るわりには
自分の所有するビルに美術品のコレクションルームをもっているのだから
何とも言えない。
その上、現社長でもあるがビルのオーナー兼現会長でもある。
つまりだ。
自分の言葉に反対意見を言えるものは存在しない。
おもちゃにも安全装置は大切だと思うけどね?
そして、同じ夜・同じ時刻がやってくる。
白と黒を伴いながら。
「これ。落とし穴の底にピラニアとかいたらシャレにならなくない?」
「冗談でもやめろ。そういうこと言うのは。」
この会話、全速力で二人とも走ってるんだから。
何気にすごいと思う。
こうやって二人の怪盗が並んで走っているのも理由は一つ。
・・・ここ以外のルートが存在しないからだ。
ほかにも道はある。
だがどのルートを選んでもこのルートは勘弁願いたいと思わせるなんとも幼稚、かつエグいとゆーかムゴいとゆーか。
そんなトラップがぎっしり。
オレたちが選んだ道順が一番まし、とゆーありさまだったり。
壁を破ろうとすれば破れずに回転したり。
通風孔にはすきまなくニカワとかが塗ってある。
・・・・・ただの美術館をここまでに作り変えたのはオーナーらしい。殴っていいかな?一発でいいから!!
オレたちの走っている場所だってまったくもって安全とはほど遠い。
どれぐらい危険か、
警官隊を配置できないレベル。
この美術館自体がすでにあってはいけない。
いけないったらいけない。