第7章 マイスウィートハート【まじっく快斗】
『次の満月が満ちる夜。
12時の鐘が鳴る、その瞬間に
砂糖の星(シュガー・スター)を
いただきに参ります。
怪盗キッド』
『同じ夜・同じ時刻、
シュガー・スターをいただきに
はせ参じます。
皆さま、
この機会を逃すことのなきよう。
怪盗ナイト』
この二つの予告状が二通同時にある人物のもとへと届いた。
片方は砂糖で作った真っ赤なバラを添えて。
もう片方は桜の形に整えた角砂糖を添えて。
どちらも砂糖の星、と書いてシュガー・スターと読む
世界最大級の針入り水晶にしゃれて送ったものだ。
まぁ。
これが誰かさんを燃え上がらせるには効果てきめんなワケで。
この誰かさんのおかげでこの『ゲーム』はスリル満点。
おかげで楽しめるんだなぁ。これが。
今日もおのれ、キッドー!!!の叫びがどこからともなく、響き渡る。
「ひっ!?」
なんとなく寒気がした気がして、
黒羽快斗は教室でしきりに腕をさすっていた。
「どうしたの?快斗?あ、風邪?」
幼馴染み兼クラスメイトの青子がのぞき込んでくる。
なにぶんつきあいだけはやたらに長い、幼馴染みというヤツは。
だからこそ。
たまに思う。
〈こいつ、俺の性別忘れてんじゃねーか?〉
と。
あまりにも親しい、といえば聞こえはいいが無防備にもほどがあるとも言える。
「いや・・なんか寒気が。」
「寒気ぇ?ま。快斗がこの時期に風邪なんてひくワケないか。」
「どーゆー意味だよ、それは。」
「バカは夏風邪ひかないって言うじゃない。」
真夏の日差しもかすむような満面の笑顔で。
そして恒例の夫婦漫才のおかげで授業はほぼ自習。
昼休みのかけっこが終わればおさまるだろう、というあきらめと根拠が教室に満ちていた。