第2章 向日葵を愛した人へ。
もうすぐ日が沈む。
今日の夕暮れまであと一分。
橋の真ん中に立ち待つ女性。
公園に集まって怪盗の現れる瞬間を待つ人々。
夕暮れは濃くなり、黄昏時がやってくる。
たそかれ、誰ぞ彼の時間。
その一瞬、世界が違うものにみえた気がした。
となりに立っているはずのじいちゃんはまるで学生のような出で立ちと若さでそこに立っている。
目線の先にはなにが見えているんだろう。
日暮れの時間、夕陽が見えなくなったはずなのに。
なぜかしら。
とても優しいまるで蛍のような淡い光に照らされて、
私の目の前に立っているのは・・・
「東・・さん?」
軍服を着こんで、でも帽子だけはかぶっていない。
だから、よけいによく見える。
貴方の目に映る私がまだ貴方と話をしていた私なこと。
「お嬢さま。」
その声を忘れたことなんてないもの。
「お嬢さま。向日葵を見せてくれて、ありがとうございます。」
「え?」
「たくさん、たくさん見てくだすった。
ぜんぶ、見ていました。一緒に。
無理な頼みなのはわかっちゃぁいたんですが
どうしても、
渡したいものがあるって。」
日が暮れて、逢魔が時の時間になる。
オレは飾りをつけるための高い高い足場の上。
みんながこっちに気がつくように、
全部ののライトアップ終わらせたの、大変だったんだよ?
さぁ。
「皆さま、お集まりいただきありがとうございまーす!
さてさて。ではここで皆さんにお聞きしたいことがありまーす!
・・・アナタの大切なものって、なんですか?
ある人は恋人と言うかもしれない。
ある人は宝石だと言うかもしれない。
全てが夢まぼろしで真実。
そこに嘘も誠も存在しない。
その時、アナタの答えは・・・変わらずにいられるかな?」
眩しいくらいのライトのせいで群衆を見ることはあまりできないけど、
この言葉、聞こえてますか?