第10章 軽い衝撃
次の日。
午前中はバイト。
私が受け持ってるのは、小6の女の子三人組。
個別塾とは言いながらも、完全にマンツーマンと言う訳では無く、一つのブースに生徒三人。講師一人。
生徒はそれぞれ、ついたてで区切られている。
一コマは50分。
終了のチャイムがなると10分休憩。
自分の好きなコマ数だけ受けて帰る。
講師も、好きなコマ数だけ事前に登録して働く。
私は、今日は朝イチから3コマ働くことにしていた。
お受験モードまっしぐら‼といった塾ではなく、自習形式で、好きな教科を好きな様に勉強し、解らない所があれば、ブースについている講師に聞くと言うスタイル。
家で一人じゃ宿題ができないからとか、
学校の授業だけじゃ解らないからとか、
目の前の三人組の様に友達と一緒に、気軽に…
と言った理由で通っている子が多い。
成績UPを気負わなくていいので楽だ。
夏休み中の今は、必死に宿題をしている子が圧倒的。
目の前の生徒達を眺めながら、午後からも高校生達の、西谷くんの、同じ様な姿を見るのかと思うと、つい顔が綻んだ。
「ねー、先生?」
「何?わからない?」
声を掛けられた方に目線を移す。
「さっきから、ニヤニヤしてる。良いことあった?」
その一言で残りの二人の手が止まった。
「何?何?教えて‼」
こうなっては、開いたお口が閉まらないのが女の子。
すっかりと勉強モードからお喋りモードに切り替わっている。
ついたて越しにぺらぺらぺらぺら…。
いくら気楽な塾だとはいえ、これではダメだろう。
「ちょっと、ちょっと君たち‼」
ぺらぺらと動く口をつむんで、三人がこちらをみた。