第9章 友人の勘違い
「ちょっと待って、冴子」
抱きつかれた身体を外した。
「だって、高2だろ?友達伝いだろ?龍に当てはまるじゃん!君夏がヤケになるくらい悩むのはウチの弟だからだろ?気にすんなよ‼ウチは大歓迎‼」
すごく、いい笑顔をしながら
すごく、饒舌に回る彼女の口。
勘違い。
勘違いだよ、冴子。
先程まで静観していた人物は、ポカンと口を開けている。
弟を可愛がっている冴子にはとても言いづらいけど、言葉を選らびながら口を開いた。
「龍くんはね…格好いいと思うよ。スッゴクいい子だと思う…」
「だろ?だろ?なのに、龍の良さを分かってくれる奴はなかなか居ないんだよ‼」
うわぁー。言いづらい。
ましてや、『龍くんじゃなくて、その友達の西谷くんが好きです』なんてもっと言いづらい。
前のめりになる冴子に、ついつい体が後ろに反れる。
「いい子だとは思うけどね…。ごめんけど、龍くんじゃ無いかなー。ってか龍くんも、私じゃなくて、同年代の可愛い子がいいだろうし…」
『同年代の可愛い子』
口にしたのは自分だが、その言葉に肩を落とす。
龍くんだけじゃない、西谷くんだって、同年代の可愛い子がいいはずだ。
いつかの烏養さんの言葉を借りれば、5歳上はおばさんだ。
「なんだ、違うか…」
隣の彼女も、あからさまに肩を落とした。
冴子にも、なんだか申し訳ない。