第9章 友人の勘違い
「大した差じゃないって先生が言ってたじゃねーか」
ケタケタと笑い飛ばす烏養さんが、正直ムカつく。
この人に恋愛相談をするつもりは無い…のに、
つい…
勢いで…
「大した差なんですよ」と口走ってしまった。
売り言葉に買い言葉みたいなやつ…?
ううん。意味、違うか…。
迂闊にも口から吐いてしまった自分の言葉。
『興味津々』
タバコに火を着けながらこちらを見る顔にそう書いてある。
『続きを言え』と目線が送られる。
「喋りませんよ」
「話せよ」
「嫌です」
「何だよ、訳ありか?もしかして妻子持ちとかか?」
烏養さんが投げ掛けた言葉に、危うく口にしていたウーロン茶を吹き出しそうになった。
「ぐっ…。ごほっ、ごほっ…」
「おいおい、大丈夫かよ」
差し出されたおしぼりを、ペコリと頭を下げて受けとる。
「ちょっ…大丈夫じゃないですよ。烏養さん、考えがぶっとんでますよ‼そんなわけ無いじゃないですか」
目の前の人を睨みつけると、「ちわーすっ」と言う聞き馴染みのある声と共に入り口の扉が開いた。