第6章 5歳の年の差は大きいか?小さいか?
「5歳ってそんなに離れてますかね。恋愛対象とか…」
心のどこかで『違う』と『恋愛に歳は関係ない』と言ってほしくて、問いかけてみた。
隣の人は、こちらを向いて一度目を丸くしたかと思えば、私の期待とは裏腹に「そりゃ、そーだろ」と答える。
「考えてみろよ。俺がハタチの時にお前は15歳。高1か?中3か?な?離れてんだろ?」
至極当然と言った顔で烏養さんは答えた。
その話に「そうでしょうか?」と口を挟むのは武田先生。
「確かに烏養くんの言う通り、学生のうちは5歳差は大きいかもしれませんが、社会に出てしまえばそんなに気になる程の差でもないと思いますよ」
優しく諭すように話す武田先生は、やっぱり先生なんだなぁっと思った。
「社会に出れば…ですね」
目線を先生から手元のグラスに下げる。
自分だってまだ学生なのに、彼が社会に出るまでにはどれくらいかかるのか…
「まぁ、烏養くんと伊藤さんくらいの歳の差なら気にならないんじゃないですか?」
その言葉にチラッと隣を見た。
同じ様にこちらを見た烏養さんと目が合う。
あぁ、5歳上なら隣に並んでも違和感無く見えるのか。
でも、5歳下となると…。
制服姿の西谷くんを思い浮かべて、溜め息を溢す。
同じ5歳なのにどうしてだろう?
私と君には大きな壁があるように思えた。