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もう戻れない夏の日に

第5章 闇が願うもの


暗い暗い世界でただひとり。
ついこの間までいた場所で、またぼんやりと虚空を見つめる。
囁いてくる声から逃げるために、五感の全てを切り離して。
聞こえない、聞こえない、
聞きたくない。
どんなに諦めても、絶望しても。
それでも彼らは間違いなく俺の全てで。
それは感情をなくした今も変わらない。
(だから、黙ってくれ)
このままでいい。
苦しみなんか、全部俺が受ければいい。
どうせ、何も感じないのだから。

『なぁ、お前も望んでいるんだろ?』
「黙れ、うるさい」

夢の中だからか、すんなりと動く両手で耳を強くふさいでも声は止まらない。

『なぁ、―――復讐しようぜ?』
「―――ッ 黙れ…!」

体の内と外で、同じ声が響いた。
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