第1章 番外編 第一話「気になるあの娘の異性はどちら?」
「――突然だけどさ、麻言の好みのタイプが気にならない?」
一仕事を終え暇を持て余した五人が、たまたま集まり駄弁っていた。
言葉通り、網問がそう切り出したのだ。
他四人はちょっとの間、呆気にとられていたが
「……本当突然だな。どうしたんだよ、いきなり」
まだ間の抜けた様な顔のままだったが、そう重が言うと
「いやさ、ふと俺は思ったんだよ。こんだけ男だらけで、自分で言うのも何だけど若いやつも多いじゃん。兵庫水軍って」
「まあ、そうですよね。それに、水軍がよぼよぼじゃ仕事になりませんし」
「いや、そうじゃねえよ白南風丸」
白南風丸の少しずれた発言に網問は素早く突っ込みを入れてから、「そこで俺は思ったわけだ」と続ける。
「ぶっちゃけた話。こんだけいりゃ、この中に麻言のタイプがいるんじゃないかなぁってさ」
にやりと笑う網問の言葉に、白南風丸は頬をちょっと赤らめながら気まずそうに目線を逸し、航は神妙な顔をして考え込み、重は思案するように目線を上にやり、間切は目線を下げて顎に手を置いた。
仕草は様々。しかし、皆脳内にいるのは一人の人間だった。
「気になるでしょ。――だからさ、本人に聞いてみない?」
その最後の言葉が決めてとなり、現在に至るわけだ。
「――もう~。何だよ、白南風丸だって気になるから付いてきたんだろ~っ」
ぶうと口を尖らせて網問が言うと白南風丸が顔を赤くした。
「そ、そうですけど……。えと、面と向かって聞こうと思ったら、どうすれば」
「普通にばーんと『麻言って水軍の中で好きなタイプっているのか?』って聞けばいいじゃんっ」
しどろもどろになりながら、視線を彷徨わせる白南風丸にあっさりと網問は言うが
「そっ、そんな簡単に言わないで下さいよ~」
と半べそをかいてしまった。