第12章 7日目
もし、本人がこの勘違いを広められてると思ったら、私はどんなに蔑まされるだろうか…!
勿論ジェイドさんがそこまで心の狭い方だとは到底思えない。
でももし、本当に恋人が出来たら、私はすごく迷惑な存在になる。
「はぁ……どうしよぉ…。」
お部屋に戻って深いため息をついた。
「何がですか?」
「きゃん!!」
後ろから急に声を掛けられ、思わず変な声が出た。
振り向くと悩みの種の張本人が立っていた。
「ジェイドさぁぁん…!」
「よしよし、なんでも言ってください。」
頭を撫でられ、照れ臭くも幸せな瞬間だった。
事実はなかなか言えなかった。
元々ここに住む気はなかったし、言ってみよう。
恐る恐る、私は口を開いた。
「実は……城内で、私がジェイドさんの許嫁というお話になっておりまして……。」
申し訳なさそうにお顔を伺うと、
「ああ、なんだ、そんなことですか。」
「そ、そんなこと!?」
驚いてしまった。大事ではないのか。
身寄りのない私を引き取っただけなのに、いつの間にかこんな話になっていて、常人ならとても怒るであろう。
「ご迷惑でしたか?」
「むしろジェイドさんの方にご迷惑が…。
だって、過去の栄光もあって、今もご立派な立場であられて、それなのに……こんな、こんなボロボロの私がそんな立場だと思われたら……、ジェイドさんの品位まで下がって見られるのではないでしょうか……?」
「そんなことはありませんよ。
好き放題言いたい方には言わせれば良いです。
私の品位が下がって見られるなら、そうさせておけばいい。
それでも、私の信念や私自身が変化するわけではありません。」
ああ、そうか。私がいてもいなくても、きっとこの方はそのまま真っ直ぐなのか…。
安心した気がして、緊張の糸が途切れた。
「よかった……助けてくださったのがジェイドさんで。」
胸の高鳴りがまた始まる。
私はきっと、この方の全てが本当に好きなんだなと、改めて思った。
「ルルさん、そういえば、お仕事を探していらっしゃったんですか?」
「あ、はい。明日からジェイドさんのお仕事も始まりますし、私もいつまでも只で豪華な食事にありつくわけにはいきませんから…。」
「まあ、城内なら…いいでしょう…。」
小声で不服そうにジェイドさんが呟いた。